思い出話1(わが社の社長)
会社の社長と同僚との3人で飲みに行った時の話
《登場人物 主人公 社長・同僚D君・ 僕・タクシー運転手》
一軒目の飲み会が終わり地元に帰ってきてから2次会によく行くバーに3人で行くことになりました。
なぜか一杯目から社長のテンションがおかしかった。いきなりノリノリで、そういう時の彼は必ずといっていいほど、ノリがめんどくさく、最後には寝るといったお決まりのパターンになる。こうなると僕たちは全く酔えず、電池が切れるまでめんどくさいテンションに付き合わないといけないのである。
お酒も進み、他のお客さんと話が盛り上がっている社長の顔を見ると前歯が無くなっていた。差し歯なのである。
「社長、前歯ない」と教えると、本人も気づいておらず 舌で確認していた。
「ほんまや!どこいったんや」 とんだアホ面である。
ほかのお客さんも巻き込んで探してみたものの見つからず
「飲み込んだんかな?」と本人はあっけらかんとしていた。
何時間たったのだろう、やはりお決まりのパターンで社長はカウンターでグデ~ッと寝てしまっていた。
夜中の3時ごろだろうか、D君にそろそろ帰ろうかと言ったが
「始発までここで飲んでるわ」とD君が言うので社長を無理やり起こして帰ろうとした。
ちょうど駅から近いバーだった事もあり社長を店の前に残し駅まで歩いてタクシーを拾いに行った。
運転手に「途中で1人乗せてほしい」と言い社長がいるところまで誘導した。
社長は店の前で三角座りでゲロを吐いていた。しかも、あろうことかそのゲロの中から無くなった歯を指で探っていた。 はたから見たらやばい奴である。
その光景をみた運転手は
「なんやあれ!あんなん乗せれるかい」と怒られ降ろされてしまった。
途方に暮れ社長のそばまで行くと「寒い~、歯~無い~」と消え入りそうな声でぼやいていた。
しかし座ったまま社長は動かない。僕は時間つぶしに辺りをうろちょろしていた。
朝の5時ごろ、明るくなりかけていたところ店が閉まってD君が出てきた。
このまま始発まで持とうと思ったが意識が戻った社長が
「始発まで待てない」というので3人で駅まで歩いてタクシーを拾おうとした。
が、しかし、運の悪いことにさっきのタクシーだった。
自分のタクシーに向かってくる我々を見ると必死の形相で
「あかんあかんあかん、あかん言うとるやろ」と怒声をあびせられた。
仕方なく寒い中始発まで待って無事に帰ってこれたとさ。
めでたし。