ゴルフの話
登場人物 父 ・ 僕
父はゴルフが趣味で70歳を超えるがゴルフによく出かける。
父のプレースタイルというのはスコアよりもドライバーの飛距離に重きを置いていて、ゴルフに行った日は「めっちゃ飛んだぞー。若い奴にはまだ負けへんでー」といつも自慢してくる。
肝心なスコアを聞くと、にっこり笑って「ゴニョゴニョ」言う。
僕も僕の兄弟もゴルフが趣味なこともあり、よく一緒にプレーする。
父は身内とゴルフする事が多いのでルールは結構緩い。打てない様な所にボールがあれば本来はどうにか打たないといけないが、身内ゴルフは甘いので父は打ちやすい所まで「ちょっと出すよー」と言って(無罰で)手で出したりする。
そんな甘々ルールでも年齢のせいかスコアがまとまらない。
父は息子らに良いところを見せようと飛距離を出そうとするが、どんどん肩に力が入り1番ホールのスイングと18番ホールのスイングが全く違うことになる。
また、ゴルフ場によって異なるが、だいたいのゴルフ場にはローカルルールというのがあって、その一つに6インチプレースというのがある。それは約15センチ以内であればボールを動かす事が出来るルール。
父は他人とプレーする時にも身内ゴルフの【ちょっと出すよ癖】が出てしまうことがある。
木の根元にボールがあって打てないと時、一緒にプレーしていたおじさん(他人)がローカルルールに則って(6インチの範囲内で)
「ちょっと動かしていいですよ」と言ってくれた。
父はお言葉に甘え、身内ルールに則りボールを拾いポーンと5メートル程放り投げ打ちやすい所まで出してきた。
あの時のおじさんの苦笑いというか、見て見ぬふり感はなんとも言いようがなかった。
しかしそんなプレースタイルが僕の笑いのツボにハマる。
残り10ヤード(約9メートル)ぐらいのグリーン周りで、カート道を超えてのアプローチショットを父が打つ場面があった。
「ええかー、打つぞー、見とけよー」と、ワシのナイスショットを見逃すなよ!と言わんばかりに僕と一緒に回っていた他二人の視線を集めた。
皆の注意が自分に向いたのを確認したのち打った球はカート道の縁石に当たり、跳ね返って自分自身の顔面に当たった。
父は現役の頃、仕事でよく怪我もしていたが痛がっている所は見たことが無い。
ボールが顔面に当たった時も相当痛かったと思うが
「なんじゃ」と、一言だけつぶやいた。
僕はヒィーヒィーいうて笑った。
ある時も2打目を打つ時、ライが悪い(打ちにくい)のにもかかわらず、より遠くへ飛ばそうと3番ウッド(スプーン)難しいクラブを選択した。僕は
「もっと簡単なクラブを選んだら?」と言ったが
「大丈夫だ。問題ない」と父(イーノック)が言った。
案の定、ダフッて3メートル程しか飛ばなかった。
3打目、クラブを変えようとしない父に
「そんな装備で大丈夫か?」と問うたが
「大丈夫だ。問題ない」とイーノック(父)がまた言った。
やっぱりダフッて全然飛ばなかった。
4打目もそのまま打った。ナイスショットがでた。
しかし前の木に勢いよく当たった球は逆戻りして自分のいる遥か後方に飛んで行った。
父は膝から崩れ落ちた。僕は腹がよじれる程笑った。
その後もあきらめずにプレーする姿勢は見習わらないといけないなぁと思った。
父とプレーするのはいろんな意味で楽しい
めでたし。