犬を保護した話その2
続き
登場人物 僕(Aさん) ・ 社長 ・ 親会社の女性(Nさん)
次の日の火曜日は病院が休みだった。
元気になってもこれからどうするか。 ウチで飼いたいけど家族は反対するだろうし、どうしたもんかと考えているとウチの実家が飼ってもいいよ、と言ってくれた。今後かかる費用も負担してくれると言う。
自分で言うのも何だが、我ながら素晴らしい家族だと思った。
ウチの会社は親会社の工場の中で下請けとして仕事をしている。
第一発見者は親会社の人であった。色々と手続きをしてくれている所を、勝手にウチが病院に連れていくことに快諾してくれたし、その後の事もいろんな人が気にかけていてくれた。(食べ物をわざわざ持ってきてくれる人もいた)
結構皆さん犬好きなんですね。
その日の夜、実家に行き、犬の状況と今後の見解を報告しに行った。気が早いもので父はもう名前まで決めて喜んでいた。
水曜日、社長と気にかけてくれていたNさんとで病院に様子を見に行った。
数値はよくなってきてお腹の異物も排便と一緒に出てきたという。
しかしオシッコの色は真っ赤だった。自力で立つこともできない。
保護した時は相当弱っていたし首輪がかなりきつく締まっていたので「これは虐待では?」と疑うほどだった。先生も「腹部に強い衝撃を受けた可能性がある」と言っていたので僕は虐待だと決めつけていた。
先生は「犬にはチップが埋め込まれている事が確認できたので飼い主を特定できます。飼い主さんに連絡とっていいですか?」と言われ、もし虐待していたら飼い主はもう探していないだろうと考え「はい」と答えた。
病院からの帰る道中 僕が
「もし見つかっても、このまま飼い主の元に返すものどうかと思うよな」と言うと
Nさんも
「そうですよね。何か方法(飼い主に返さない方法)ないですかね」と社長も僕も同じこと思っていた。
会社に戻り仕事をしていると電話が鳴った。病院から
「飼い主さんと連絡取れました。飼い主さんに連絡先教えてもいいですか」と
「いいですよ」と答え電話を切るとすぐ電話が鳴った。飼い主さんからだった。
「Aさんですか。この度は本当にありがとうございました。」
僕は、虐待するような人だから最低な人間だと決めつけていた。しかし電話越し物腰の低い感じの話口調の飼い主さんにちょっとびっくりした。
直接会って経緯を聞かせてほしいとお願いし話を聞いた。
約一年前から行方不明になっていて目撃情報があれば出向くが保護できずに一年経ったらしい。
なるほど、それならば首輪が締まっていた(成長のせいで)のも理解できるし、腹部に強い衝撃を与えたのも飼い主さんではないはず。何よりも連絡を受けてすぐに病院に駆けつけるところをみると大事にしていたんだろうなぁと推察できた。
今後の世話を引き受けるというので任せることにした。一番良い結果ではないだろうか。
心配していたNさんの所に行き、飼い主さんと連絡が付き、今後は飼い主さんが面倒みるという事で一件落着と報告した。
すると僕と同じように虐待を疑っていたNさんは【この人でなし】と言う目線を僕に向けてきた。慌てて経緯を説明した。たぶん納得してくれてたっぽい。
その後も病院に連絡し入院の状況を確認したりしていた。
約2週間程たって退院したことを聞いた。飼い主さんには退院したら教えてくださいね、と言っていたのに報告ないことに残念に思っていると退院した次の日にちゃんと連絡くれた。
「まだ自力で立てないがこれからリハビリ頑張っていきます」と報告してくれた。
「また元気に歩けるようになったら会いに行かしせて下さいね」とお願いしておいた。
結果、この騒動の一番かわいそうな人は、飼う気満々だった父ではないだろうか。
この一件落着を報告すると父は部屋にひきこもった。
めでたし。