犬を保護した話その1
登場人物 僕(Aさん)・ 畑〇君・ 浜〇君
2週間ぐらい前の月曜日、朝礼が終わり、工場の中をウロチョロしているとニヤニヤしながら畑〇君が近づいてきた。
畑〇君「おはようございます」
僕「おはよう」
畑〇君「Aさん、ペット飼いたいって言ってましたよね?」
僕「うん、言ってたよ」
畑〇君「あっちの倉庫に死にそうな犬保護したんですけど、どうですか?ヒッヒッヒ」
と笑みを浮かべて立ち去った。
何の事だろうと、犬が大好きな浜〇君を連れて倉庫に向かった。
すると、もう身動きどころか顔も上げることのできないめちゃくちゃ弱った犬が毛布を掛けられ横たわっていた。
保護した人の話を聞くと、朝会社に着くと前日の雨でビショビショに濡れた犬が倒れていたとの事。最初息もしてるのか分からない状況だったのでてっきり死んでいると思ったほどだったらしい。
生きているのを確認出来てから食べるものと飲み物を用意したが口にすることもできないほど弱っていた。
多分、あと数時間発見が遅れていたら死んでいたと思う。
畑〇君は【死にそうな】と言っていたがオーバーに言ってるんだろうと思って実際見てみるとホンマに死にそうだったのでウチの従業員には、とんだサイコパスがいたもんだと気づかされた。
ウチの会社の近くには動物施設があり、そこでは猫や飼育を放棄された犬がたくさん殺処分されている。
放っておくと死ぬかもしれない、助かっても施設に連れて行かなければいけないかもしれない。目の前の弱っている犬をみてどうしたもんかと考えていると浜〇君が
「動物病院に連れていきましょう」と言った。
僕も病院へ、と頭をよぎったが口には出せなかった。
なぜかというと、死を目前の犬の命と、仕事が忙しく浜〇君の抱えている仕事量を僕は正直天秤にかけていた。
しかし、浜〇君は言った。
「施設で殺処分されるペットは助けられへんけど、いま自分の目の前にある命はどうにかしてあげたい、結果助からないかも知れないけど、出来るだけの事はしてあげたいんです。」と
浜〇君は仏の様な人で「いずれ会社の利益がでて余裕が出来たら動物を保護する慈善団体を立ち上げたいんです。」とよく言っている。
ウチの会社には仏とサイコパスが居てプラマイゼロで成り立ってます。
近くの病院に電話し予約を取った。その時だいたい費用はどれくらいかかるのか?を聞くと電話の窓口の人が
「検査内容によって変わってくるので何とも言えません。気持ち多めに持ってきてくれたら大丈夫だと思います。」との事
僕は、おそらくこのまま入院になるだろうから今日はそんな費用は掛からないだろうと考え、いざ病院へ
検査をしてもらうと38℃ぐらいないといけない体温が32℃しかない低体温症。血液検査の結果腎臓(肝臓やったかな)の数値が以上に高い。そのほかは特に問題なし。
病院の先生は
「入院させないといけないが、保護した犬だという事でこのまま検査を続けると費用が掛かってくるし、今後の犬の面倒は大丈夫ですか?」と聞かれ
何も決まっていないが「はい」と答え治療を続けてもらうようにお願いした。
病院を出て、これからどうしようかと考えながら車へ乗り込むと病院から電話がかかってきた。「入院の内金をお支払いいただけますか?」
なるほど、そういうシステムがあるんですね。
レジへ行くと「2万円頂きます」
この時、僕と電話の窓口の人が言う【多め】の考えにズレが生じた。
人間の病院て1万円かかる事ってなかなかないと思う。それは健康保険があるから。
当然保護した犬にペット保険なんて入っていない。
【こりゃ退院するころにはウチの小さな会社の利益がちょっと飛ぶな】と思った。
財布を見ると1万8千円しか入っていない。
「1万8千円じゃあかん?」と大阪名物【まけて】を治療費でかましてみた。
ここで自分の父親なら【まけて】の後に間髪入れず「養子やねん」と言うが(その言葉にどんな効果があるのか分からない)、僕にはまだそれを言う勇気が無かった。
結果近くの銀行で降ろして支払った。
その2へ続く