大型バイク
主人公 社長・僕
ウチの社長はバイク好き
取引先の方たちとよくツーリングに出かける。
僕はバイクの免許を持っていないので、そういう付き合いはできない。
ある日社長が「お前も免許取りに行ってこい。俺がツーリングに付き合われへん時は代わりに行ってくれ。免許費用は出したるから」と言ってきた。
あまりバイクに興味はないが、費用を出してくれるんならありがたく取りに行こう。
幸い会社から5分かからないところに教習所があったので、仕事にそんなに影響なく取りに行けた。
バイクに興味がないとは言え、やはり免許を取ったら乗りたくなる。
社長にバイクを借りて乗ってみることにした。バイクはZ900のなんちゃらってヤツ、ちょっと前に購入し、ほぼ新車。
比較的運転しやすいバイクらしいが教習所のバイクに比べると大きいし若干乗りにくい。
最初は安全運転を心掛けていたが、調子に乗ってカッコよくUターンをしようとしてバランスを崩し、バイクを倒してしまった。
傷はそんな大したことはなかったが、ミラー部分とエンジンの下の部分に傷が入ってしまった。
話は変わるが、家で子供がモノを壊したとき、僕は怒らない。多分家の物でも自分の物でも壊されて怒ったことが無いと思う。
なぜなら、自分の考えの中では、形あるものはいつか壊れると思っているから。
たとえ愛着あった物であっても怒らない。そもそも物に対してそこまで愛着を持たない。
今回バイクを傷付けてしまった時も、形あるものはいつか壊れると思った。
が、今回は自分の物でも無いし、ほぼ新車、壊す第一歩にはあまりにも早すぎる。
正直に謝った。
社長は「はぁ!あんな運転しやすいのに何でコケん(倒すの意味)ねん」
と怒られた。
エンジン下部の傷は黒く塗って目立たないようにし、ミラーは新しいのを社長自ら買ってきた。僕はお金払っていない。
何日か経ち、社長の心の傷が癒えた頃に、またバイクを借り乗ってみる。
エンジン下部の傷はどんなんやったかなぁ、と気になった。
バイクを止め、降りてから見ればいいものを、信号待ちをしている時に気になってしまった。
一度気になるとすぐに確認しないと気が済まない病が発症。
信号待ちの両足をついた状態で車体を傾け下を覗き込んだ。
するとバイクの重さを持ちこたえられなくなり、またバイクを倒してしまった。
新品のミラーがまたもや傷ついた。形あるものはいつか壊れる。しかし早すぎる。
正直に謝った。
「だから、なんであんな運転しやすいのにコケんねん!!」
と怒られた。
新しいミラーはもう買ってこなかった。
形あるものはいつか壊れる。
バイクってすぐコケるから困る。
めでたし。